宮崎:神話を今に伝える神社 「古事記」編纂1300年


 お宮参りや七五三、各ご祈祷などで祝詞をあげる神社の神主さん。
 その祝詞をあげる前に必ず唱える言葉がある。 それが祓言葉(はらいことば)。

 「掛けまくも畏き 伊邪那岐の大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 御禊祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等 諸諸の禍事 罪 穢有らむをば 祓い給ひ清め給へと白す事を聞こし食せと 恐こみ恐こみも白す」

 宮崎市阿波岐原町にある江田神社は全国の神社の神主さんにその名を知られている神社です。
 祓言葉に出てくる「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原」(つくしのひむかのたちばなのおどのあわきはら)こそがこの土地を表す言葉。 古事記にも記述があるこの場所は、日本の伝説の重要な神々が多数生まれた土地であります。
 江田神社のご祭神はイザナギとイザナミ。日本神話でたくさんの神を生んだ“生命の神”です。

江田神社

 ここで、少々、日本神話の創世のお話にお付き合いください。
 このイザナギ、イザナミは淡路島を最初に生んで、合計八つの島を生み、日本の国土を生んだと言われています。
 その後、山の神、海の神、野の神、たくさんの神を生み、次々と35の神を生み出します。
 その35番目、火の神カグヅチを生んだ時、母神イザナミは重度の火傷を負ってしまいます。その激痛に耐えながらも、命の限り神々を生み続けます。
 いよいよ力つきて黄泉の国へと旅立った妻イザナミを追い、夫イザナギは死んだ妻を連れ返しに向かいます。
 「黄泉国の神様にお伺いをしてくるから、戻って来るまでに、それまでには決して私の姿を見ないで」と、姿を見せずに伝えたイザナミの声に納得し、待ったイザナギ。
 だが、いつまで待っていても出てこない妻に、我慢できずに恐る恐る見てしまった夫イザナギ。そこには朽ち始め、変わり果てていた妻の亡骸。見られたくない姿を見られ怒り狂ったイザナミは、驚き慌てて逃げ帰るイザナギを激高して追ってきます。黄泉国への入り口を穴で塞ぎ、命からがら逃げ帰ってきたイザナギは身を清めるために禊(みそぎ)をします。この時にもたくさんの神が生まれたのですが、左目を洗い生まれたのが天照大神、右目を洗い生まれたのが月読命、鼻を洗い生まれたのがスサノオといわれています。

 この由緒ある江田神社に今年の初詣を参拝する事にしました。
 鳥居をくぐり歩を進めると鬱蒼とした参道に心が落ち着きます。行く手右側に大きなご神木が見えてきます。
 パワースポットとの事で、幹を撫でたり、抱きかかえている人もいます。根元近くには芽株とおぼしき新しいこぶも盛り上がって、ご利益に預かろうと撫でられたのでしょうか、ひときわ明るい木肌になっていました。
 たくさんの参詣者に並び、今年の祈願をしたら、一年の気持ちを込めておみくじひきです。運勢は秘する事として、このおみくじにはとても素敵な小さなお土産の破魔矢がついていました。

 江田神社からイザナギが禊をしたと言われるみそぎ池につながっています。江田神社から歩いていくと途中に「みそぎ御殿」があります。
 小さなお社ですが、前述の天照大神、月読、合計九神、たくさんのご祭神を抱えています。
 ここでは四礼八拍手四礼の他の神社とは違ったおまいりのお作法で参拝します。

 みそぎ池は静かにその水を湛え、現代にその姿を伝えていました。

 これから始まる新しい一年が健やかに過ごせるようにと参拝する初詣。
 幸多かれと祈る人の心はいつの時代でも一緒です。
 人々の心と暮らしが実り多い年となりますように。

(写真・文/橋口)